「反芻思考」を脳科学でハックする戦略

脳科学×心理学

なぜ、あの恥ずかしい記憶は夜中に蘇るのか?


悩みと問題提起

どうも、いわしです。皆さん、夜中に突然、5年前に上司に言われたキツい一言や、学生時代のプレゼンで大失敗したあの瞬間が、脳内再生されることはありませんか?

僕は、あります。

「あ、あそこで、ああ言っておけば…!」

「なんで俺は、あんなアホなことを…」

深夜2時、布団の中で、過去の失敗を延々とリピート再生。もう十分反省したはずなのに、脳が勝手に「追い反省会」を始めるのです。

この「悩みすぎ」とも言える現象、実はただの「考えすぎ」や「反省熱心」な性格の問題ではありません。

これは「反芻思考」と呼ばれる、悩みを意図せず悪化させてしまう「脳の習慣回路」なのです。

今回の記事は、この厄介な反芻思考の正体を、科学の力を借りて丸裸にし、「なぜ僕たちの脳は、わざわざ自分を苦しめるのか?」という疑問に迫る、シリーズの序章です。


そもそも「反芻思考」とは

僕も最初はそう思っていました。「反芻」とは、本来ウシなどが一度飲み込んだ食べ物を再び口に戻して咀嚼する行為。

心理学における「反芻思考」も、これとよく似ています。

心理学者のスーザン・ノーレン=ホークセマ(Nolen-Hoeksema)らによる2008年のメタ分析(※複数の研究をまとめた信頼性の高い研究)によれば、反芻思考とは「自分自身のネガティブな感情や問題の原因・結果について、繰り返し、受動的に考え続けること」と定義されています(Nolen-Hoeksema et al., 2008, Psychological Bulletin)。

ポイントは「受動的」であること。

  • 解決的な思考(反省): 「なぜ失敗したか?」→「Aが原因だ」→「次はBという対策をしよう」
  • 反芻的な思考(悩み): 「なぜ失敗したか?」→「俺がダメだからだ」→「あいつも悪い」→「ああ、最悪だ」→(最初に戻る)

前者は問題解決に向かいますが、後者はネガティブな沼の中でグルグルと「思考の空回り」をしているだけなのです。

そして、この研究は残酷な事実も突きつけています。反芻思考は、うつ病や不安障害、ストレスを悪化させ、持続させる強力な要因である、と。

つまり、僕が夜中に布団キックしていたあの時間は、「反省」ではなく、自らストレスを増幅させる「習慣」だったわけです。トホホ…。

脳の「おしゃべり機能」が暴走している?

ではなぜ、こんな非効率なことを脳は自動でやってしまうのでしょうか。

「サボりたい」と思っても、脳は勝手に悩み始める。この現象の鍵を握るのが、脳科学で注目される「DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)」です。

DMNとは、私たちが「何もしていない時」(ぼーっとしている時、シャワーを浴びている時、そして寝る前)に活発になる脳の回路網のこと。

DMNは、過去の記憶を整理したり、未来の計画を立てたり、自分自身について考える「自己省察」を担う、大切な機能です(Raichle et al., 2015 のレビューなどで詳述)。

しかし、このDMNが「過剰」に活動すると、どうなるか。

特にネガティブな記憶や感情と結びつくと、「暴走したDMN」は、過去の失敗や未来の不安を延々と、自動的に、高解像度で再生し始めます。

これが、僕たちが「考えたくないのに考えてしまう」反芻思考の脳科学的なメカニズムの一つなのです。

DMNは、例えるなら「脳内のおしゃべりラジオ」。普段は有益な情報を流してくれますが、一度ネガティブな電波を拾うと、延々と「お前の失敗特集」を放送し続けてしまうのです。


解決策

今回の「いわし学び」をまとめます。

【今日の学び】

  1. 夜中に蘇る過去の失敗は「反芻思考」という脳の習慣である。
  2. 反芻は「反省」ではなく、ネガティブな感情を増幅させる「思考の空回り」に過ぎない(Nolen-Hoeksema, 2008)。
  3. 脳が「ぼーっとしている時」に活動するDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)の過剰活動が、反芻を引き起こす(Raichle et al., 2015)。

まずは「あ、今のはただの反省じゃなくて、脳のDMNが暴走してる『反芻』だな」と客観的に気づくことが、戦略的な第一歩です。

では、あなたはこの「反芻ラジオ」にどれくらい電波をジャックされているでしょうか?

【今日からできる「反芻」チェックリスト】

  • □ 終わったことを「なぜ?」と繰り返し自問するが、答えが出ない。
  • □ 嫌なことがあると、数時間(あるいは数日間)そのことばかり考えてしまう。
  • □ 「あの時ああ言えば…」と過去の会話を何度もシミュレーションする。
  • □ 友人との会話でも、自分の悩みや不満を繰り返し話してしまう。
  • □ 夜、布団に入ると過去の失敗や未来の不安が頭に浮かびやすい。

もし3つ以上当てはまったら、あなたは立派な「反芻思考」の持ち主かもしれません。

では、この暴走するDMN、厄介な反芻思考に、私たちはどう立ち向かえば良いのでしょうか?

次回は、この「反芻思考」を止めるための、科学的かつ戦略的な「具体的なハック術」について解説していきます。


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