「集中力ないかも…」と悩む方へ。科学が示す「音楽」がマルチタスク能力とワーキングメモリを鍛える“2つの仕組み”

脳科学×心理学

どうも、いわしブログです。

突然ですが、最近こんなことありませんか?

  • 子どもに話しかけても、スマホやゲームに夢中で生返事。
  • 「さっき言ったでしょ!」と注意しても、「え?そうだっけ?」とキョトンとされる。
  • 仕事をやっていたはずが、いつの間にかYouTubeを見ている…。

現代社会は、大人も子どもも刺激で溢れかえっています。私たちの脳は、常に複数の情報(マルチタスク)にさらされ、注意は分散し、記憶はパンク寸前です。

「うちの子、どうも集中力がない…」「複数のことを同時に処理するのが苦手みたい…」

もし、そんな悩みを「楽しみながら」解決できるとしたら?

今回は、音楽トレーニングが脳をいかに強力に鍛え上げるか、その驚くべき「2つの脳内メカニズム」を解き明かした論文をご紹介します。


まるで「地獄のマルチタスク実験」

今回ご紹介するのは、チリの研究チームによる論文です 1

研究チームは、「音楽をガチでやってる子って、なんか頭の回転、早くない?」という疑問を、fMRI(脳の活動をスキャンする装置)を使って科学的に検証しました 1

集められたのは、10歳から13歳の子どもたち 。

片や、オーケストラなどで週に何時間も楽器を練習している「ミュージシャン群」。

片や、学校の授業以外では特に音楽トレーニングを受けていない「コントロール群」。

彼らに課されたタスクが、なかなかにイジワル(?)なのです。

fMRIの中で、子どもたちはヘッドホンから「メロディ」を聴かされ、同時に目の前のスクリーンに「抽象的な図形」を見せられます 。

そして、こんな指示が飛ぶのです。

  1. 聴覚集中(ASA): 「メロディだけに集中して!図形は無視!」
  2. 視覚集中(VSA): 「図形だけに集中して!メロディは無視!」
  3. 分割注意(DA): 「メロディと図形、両方とも覚えて!」

タスクが終わるや否や、「さっきのメロディ、これと同じ?違う?」「さっきの図形は?」と、記憶力テストが実施されました 。


驚きの結果:「聞いていないはずの音」まで覚えていた

さて、結果はどうなったでしょう。

まず、当然ながら、両方のグループとも「注意してね」と言われた方(聴覚集中ならメロディ、視覚集中なら図形)は、よく覚えていました 。これは当たり前ですね。

しかし、本当の違いはここからでした。

衝撃の事実①:ミュージシャン群は、全体的に成績が良い

ミュージシャン群の子どもたちは、注意の条件(聴覚だけ、視覚だけ、両方)に関わらず、コントロール群よりも全体的に記憶タスクの成績が良かったのです 。

衝撃の事実②:「自動エンコード機能」が作動?

最も驚くべき差が出たのが、「視覚集中(VSA)」の条件。

つまり、「図形に集中して!メロディは無視!」と言われていた時です。

コントロール群は、指示通りメロディをあまり覚えていませんでした。

ところが、ミュージシャン群は、無視するはずだったメロディまで、コントロール群より有意にしっかり覚えていたのです 。

まるで、意識的に注意を向けていなくても、耳に入った情報を「自動で記憶する機能」が働いているかのようです。


なぜ? fMRIが解き明かした「2つの脳内ブースト」

なぜ、ミュージシャンの子どもたちは、こんな離れ業ができたのでしょうか?

fMRIが、彼らの脳内で起きている「2つの秘密」を明らかにしました。

メカニズム①:脳の「司令塔」がブーストされている(ドメイン一般)

ミュージシャン群は、タスク(情報を記憶する「エンコーディング」)の最中、コントロール群に比べて、脳の「前頭頭頂制御ネットワーク」と呼ばれる領域が明らかに活発でした 。

このネットワークは、目標に向かって注意を管理し、何を記憶し、何を無視するかを判断する、まさに脳の「司令塔」です 。

考えてみれば当然かもしれません。

楽器の演奏とは、「楽譜(視覚)を読み」「次の音を予測し」「指(運動)を正確に動かし」「鳴った音(聴覚)をチェックし」「周りの演奏と合わせる」という、超高度なマルチタスク活動です 14。

この日常的な「脳の筋トレ」が、司令塔そのものの機能(ドメイン一般=汎用的な能力)を底上げし、音楽以外のタスク(今回の実験)においても、注意と記憶のパフォーマンスを向上させていたのです 15

メカニズム②:「聴覚専用の高速道路」が整備されている(ドメイン特異的)

では、「無視したはずの音まで覚えちゃう」という謎の現象は何だったのでしょう。

研究チームがさらに分析を進めると、この現象は「左下前頭回(IFG)」と「左縁上回(SMG)」という2つの領域の活動と強く関連していました 。

これらは「音韻ループ」と呼ばれる、音の情報を一時的に保持し、処理するための重要な回路です 。

そして決定的なのは、音楽のトレーニング年数が長い子どもほど、この「音韻ループ」関連領域の活動が高かったことです 。

つまり、こういうことです。

長年の音楽トレーニングは、司令塔を鍛えるだけでなく、「聴覚情報を処理するための専用の道路」をも脳内に作り上げていたのです。

だから、ミュージシャン群の子どもたちは、たとえ意識を視覚に向けていても、耳から入ってきた情報をこの「道路」で効率よく処理し、記憶することができていた、というわけです 。


まとめ:音楽は「脳の戦略的トレーニング」である

この研究が示すのは、音楽トレーニングが単なる「趣味」や「情操教育」にとどまらない、強力な「脳トレ」である可能性です。

音楽は、

  1. 汎用的な「司令塔」(前頭頭頂制御ネットワーク)を強化し、
  2. 専門的な「聴覚回路」(音韻ループ)を高速化する、

という、まさに一石二鳥のメリットを脳にもたらすのです 。

もちろん、この研究は「もともとそういう能力が高い子が音楽を続けただけかも」という可能性も排除していません 。

とはいえ、「うちの子、なんだか集中力が…」と悩んだ時、スマホやゲームの時間を減らすだけでなく、生活の中に「音楽」という戦略的な“脳への投資”を取り入れてみるのは、非常に面白い選択肢ではないでしょうか。

注意散漫な現代社会を生き抜くための「脳のしなやかさ」を育むヒントが、そこにあるかもしれません。

かく言う私もギターを始めてから集中力が上がったような気がします(笑)

いわしブログでした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました