どうも、いわしです。
突然ですが、スポーツをするときに「この練習意味ある?」みたいな疑問わきませんか?
私はいま柔術にハマっているのですが、道場には大きく分けて2種類の練習時間があります。
一つは、ひたすら同じ技を繰り返す「ドリル(反復練習)」。もう一つは、実戦形式で戦う「スパーリング(ゲーム練習)」。
打ち込み(ドリル)をした日、私はふと思うのです。
「…この地味な反復、本当にスパーリングで役立つのだろうか?」
かと思えば、スパーリングで先輩にボコボコにされた日。
「…スパーばかりで、“技の精度”がおろそかになっていないか?」
これは柔術に限りません。
サッカーのパス練習、野球の素振り、バスケのフリースロー。
「反復練習」と「ゲーム練習」。
「練習してるのに上達しない…」という悩み。それは、この2つの練習の“配分”が間違っているせいかもしれません。
本日は、スポーツ科学の観点から「反復練習 vs ゲーム練習」という永遠のテーマに、科学的かつ戦略的に決着をつけます。
あなたが今すぐ取り入れるべき「学び」と「行動」が、この記事の最後に待っています。
「反復練習」選手 vs 「ゲーム練習」選手
イメージをつかみやすくするため、ここからは以下の2人の選手にお話を聞く形で進めてみましょう。
スポーツ科学という法廷で、どちらがアスリートをより「上達」させるのか、それぞれの主張を聞いてみます。
「反復練習」選手の主張
「 私は『反復練習』が練習において最も大切だ!」
彼の主張はこうです。
スポーツの上達には、特定の動きを脳や神経系に焼き付け、無意識でも実行できるレベル(=自動化)にすることが不可欠である、と。
【メリット】
- 技術の自動化:自転車の乗り方を一度覚えたら忘れないように、正しいフォームを反復することで、いちいち頭で考えなくても体が動くようになります。(出典:CORE「スポーツにおける技術上達の方法」など)
- ミスの即時修正:ゲーム中と違い、フォームのどこが悪いかをピンポイントで修正できます。
- 技術の精度向上:ゴルフのスイングや柔術の投げ技など、特定の技術の「精度」や「一貫性」を高めるには、反復が効果的です。(出典:[4])
しかし、異議が入ります。
「反復練習選手! あなたは『練習では完璧なのに、試合では力を発揮できない』アスリートを生み出してはいませんか?」
【デメリット】
- 実戦への「転移」が低い:練習はあくまで「予測可能な」状況。しかし、試合は「予測不可能な」カオスです。反復練習で培った技術が、実戦のプレッシャー下で応用できないケースは多々あります。(出典:[2])
- 飽きやすい:正直、地味で退屈です。モチベーションの維持が困難です。(出典:Correct My Play 2.1)
- 判断力が育たない:相手がどう動くか、今どの技を使うべきか、という「意思決定」の練習にはなりません。
「ゲーム練習(GBA)」選手の主張
「 上達とは『試合で勝つ』ことです! そのために試合に近いゲーム練習が重要です!」
GBA(ゲームベースドアプローチ)とも呼ばれる彼の主張は、より実戦的です。
【メリット】
- 意思決定能力の向上:ゲーム練習は「判断の連続」です。相手の動きを見て、瞬時に最適解を選ぶ訓練になります。これこそが「試合に強い」選手を育てます。(出典:[1])
- 戦術的理解が深まる:なぜこの技術が必要なのか、どの場面で有効なのかを、体で学べます。
- モチベーションの維持:何より楽しい。練習への意欲が湧き、結果として練習量が増えることもあります。
しかし、こちらにも反論です。
「『基礎ができていない選手』をただ混乱させ、悪いクセを放置しているだけではありませんか?」
【デメリット】
- 技術習得が難しい:ゲーム中は流れが速く、一つの技術をじっくり練習する余裕がありません。
- 基礎の欠如:そもそも「型」ができていない初心者がゲーム練習ばかりすると、変なクセがついてしまい、上達が頭打ちになる危険性があります。(出典:[3])
勝利の鍵は“ハイブリッド”にあり
どちらの主張にも一理あります。
そこで、決定的な証拠として「メタ分析(複数の研究を統合した、信頼度の高い研究)」の結果を見てみましょう。
スポーツ科学の世界では、この論争は長年続いています。
いくつかのシステマティックレビューやメタ分析( [1],[2],[3])を統合して見えてきた、現代の結論はこうです。
- 「判断力」を養う上では、ゲーム練習(GBA)が反復練習より明らかに優れている。
- 「技術そのもの」の習得においては、ゲーム練習は反復練習と「同等」か、場合によっては「劣る」可能性もある。
……なんだか、スッキリしない判決ですね。
しかし、ここからが本題です。
科学が示しているのは、「どちらかを選べ」ということではありません。
「両者の“良いとこ取り”をしろ」ということです。
近年のスポーツ科学のトレンドは、「代表的練習設計(Representative Practice Design)」。
これは、「いかに練習を“試合の状況”に近づけるか」という考え方です。
- ただの反復練習ではなく、試合の状況を切り取った「状況設定ドリル」を行う。
- ただのゲーム練習ではなく、特定の課題(例:パス禁止)を課す「制約付きゲーム」を行う。
そう、真の勝者は「反復練習選手」でも「ゲーム練習選手」でもなく、両者を戦略的に使いこなす「ハイブリッド選手」だったのです。
【学び・行動】あなたの“悩み”を解決する戦略的練習メニュー
判決は出ました。では、私たちは明日からどう行動すればいいのか?
あなたの「悩み」を切り口に、具体的な戦略(学び・行動)を処方します。
悩み①:「新しい技を覚えたてで、形がぐちゃぐちゃ…」
処方箋:まずは「反復練習」の比重を高めよ!
- 行動:この段階では、判断力は不要です。まずは反復し、正しい「型」を体に叩き込みましょう。フォームが固まらないうちにゲーム練習に入れると、変なクセが定着してしまいます。
悩み②:「練習では完璧なのに、試合(スパー)だと全く技が出せない…」
処方箋:「状況設定ドリル」で“判断の負荷”を加えよ!
- 行動:あなたの課題は「技術」ではなく「判断」です。
- (柔術の例)ただの打ち込みではなく、「相手に襟を掴まれた状態からスタート」「相手が担ぎ技を狙ってきたリアクションとして」など、試合で起こりうる状況を設定して反復練習します。
- (サッカーの例)ただのパス練習ではなく、間にディフェンス(最初は動かないコーンでも可)を置き、どこにパスを出すか「判断」させながら練習します。
悩み③:「最近、上達が頭打ち。何が悪いかわからない…」
処方箋:「ゲーム → 反復 → ゲーム」のサイクルを回せ!
- 行動:これが最も重要です。
- まずゲーム練習(スパーリングなど)を全力で行い、自分の「課題」を特定します。(例:「いつも右側からのパスガードが通せない」「特定のサーブが返せない」)
- 次に、その課題を克服するための反復練習を集中的に行います。(例:右からのパスガードのドリルだけを徹底的にやる)
- そして再びゲーム練習に戻り、反復練習した技術が実戦で使えるか試します。
反復練習は「武器を研ぐ作業」、ゲーム練習は「その武器の使い方を学ぶ実戦」です。
研いだだけでは戦えないし(悩み②)、使い方も知らずに戦場に出れば丸腰も同然(悩み①)。
実戦(ゲーム)で課題を見つけ、工房(反復練習)で武器を研ぎ澄まし、再び実戦で試す(悩み③)。
あなたの今の悩みは、どの段階にありますか?
明日の練習メニューに、ぜひこの「戦略」を一つまみ加えてみてください。
【出典】
- [1]Robles et al. (2020) “The effect of game-based approaches on decision-making, knowledge, and motor skill: A systematic review and a multilevel meta-analysis” (ResearchGate 2.6)
- [2]MDPI (2020) “Effects of Teaching Games on Decision Making and Skill Execution: A Systematic Review and Meta-Analysis” (2.7)
- [3]ResearchGate (2025) “Developing skill within the context of a Game-Based Approach” (2.2)
- [4]PMC – NIH (2025) “The influence of game-based learning on tactical awareness and skill development in golf training programs” (2.4)


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