どこまでリスクを取っていいのか?
こんにちは、いわしです。
ここまで、私たちは「市場に居続けること」の重要性と、「買って宿題をせよ」という原則を学んできました。しかし、ここで新たな“悩み”が浮上します。
「持っているお金は、どれほどのリスクを取っていいのだろうか?」
例えば、絶対に失敗できない「退職金」と、最悪なくなっても生活に困らない「遊び資金」を、同じ株に、同じ比率で投資するのは、どう考えてもおかしいはずです。
ジム・クレイマーは、この「資金の混同」こそが、投資家が過度なリスクを取ってしまう根本原因であると指摘しています。
本章では、私たちの資金を戦略的に二つに分類し、「失敗できない資金」を確実に守りながら、「チャンスを掴む資金」で勝つための、リスク管理の基本を学びます。
投資資金を「二つの流れ」に分類する
クレイマーは、投資の目的が違えば、取るべき戦略もリスク許容度も異なると主張し、資金を以下の二つの「流れ」に分類します。
必要の資金の流れ — 失敗できないお金
これは、あなたの老後の生活費や、仕事を辞めた後に必ず必要になる資金です。クレイマー曰く「最優先事項であり、失敗するわけにはいかない」お金です。
- リスク許容度: 極めて低い。市場の急激な下落で、生涯分の貯蓄が一掃されるのを防ぐのが目的です。
- 年齢別戦略:
- 若い時(20代): 給料で取り戻す時間があるため、高成長株中心の最も積極的な戦略を取れます。
- 30代: 配当を支払う株へ徐々にシフトし、投機を減らす。
- 40代以降: 債券(資本の保全)を組み込み始め、退職が近づくにつれて固定収入(債券など)の比率を大きく増やします。
裁量の資金の流れ — チャンスを掴むお金
これは、給料を補い、趣味や旅行、高額な品物の購入などに充てる、「余裕」資金です。
- リスク許容度: 高い。この資金こそ、大きなリターンを狙うための投機に回すべきです。
- 投機比率の目安: 20代では50%まで投機に回し、その後10年ごとに10%ずつ減らし、決して10%を下回らないことが目安とされています。
※警告:二つの流れを混同するな!
この二つを混同すると、最も守るべき退職金でリスクを取りすぎる一方で、攻めるべき裁量資金で保守的すぎるという、最悪のバランスに陥ります。
リスクなしで利益をもたらす「分散」
資金の分類と同じく、あなたの資産を守る「分散」についても考えておきましょう。
- 防御機能: 分散は、市場の急落という「ハリケーン」からあなたを守る避難所であり、企業の不正行為から資産を守る武器になります。
- 危険な集中: 特定のセクター(例:テクノロジー株、食品株)に全資金を集中させるのは危険です。かつて好調だったセクターも歴史的には終焉を迎えています。
- 科学的な銘柄数: 真の分散を捉えるには最低5銘柄が必要です。しかし、15銘柄以上になると、管理が煩雑になるため、インデックスファンドに任せた方が賢明です。
「買って宿題」の具体的なやり方 — 成功者がチェックする3つの指標
では、「買って宿題」の「宿題」とは、具体的に何をすることでしょうか?
チャートを見るのは宿題ではありません。
公正開示規則のおかげで、今やインサイダーでなくとも、誰もが無料でバイタルな情報を得られるようになりました。
宿題の機会(利用すべき無料の情報)
- EDINET: 四半期報告書が無料で即座にダウンロード可能。EDINET
- 決算説明会: 企業が投資家向けに行う決算説明会。これこそが最もバイタルな情報を与えます。
- Google/Yahoo!: 地方の記事も含め、企業のニュース記事をくまなくチェック。
四季報・決算書でチェックすべき3つの指標
宿題の目的は、その企業が本当に成長しているか、そしてどれだけ守りが堅いかを見極めることです。
- 成長性の測定:
- 売上/収益: 売上が前年同期比でどれだけ伸びているか。ビジネスの勢いを測ります。
- 1株当たり利益(EPS): 利益がどれだけ成長しているか。四季報の「1株益」欄を過去数期分見て、その成長速度を確認します。
- 売上総利益:
- チェック場所: 決算書の損益計算書。
- 意味: 各売上が、材料費や製造コストを引いた後、どれだけの利益(粗利)を生み出せているか。粗利率が高いほど、そのビジネスの競争優位性が高い証拠です。
- 業界固有の指標:
- 意味: 小売業なら「既存店売上高」、ホテル業なら「平均客室売上」など、その業界特有の成功指標。
- これを理解しなければ、「宿題をした」とは言えません。あなたが投資するセクター特有の指標を必ず確認しましょう。
財務健全性のチェック
成長だけでなく、負債のチェックも必要です。
- 負債: 「負債のない会社」をできる限り選ぶべきです。多額の負債を抱えた会社は、景気が悪化した際、債権者に会社を乗っ取られ、株主権を剥奪されるリスクがあります。貸借対照表を見て、負債の多寡を必ずチェックしましょう。チェックの仕方は以前の記事にも書きました。
【結論】リスク・リワードを判断するプロの視点
私の「資金の混同」という悩みは、ジム・クレイマーの教えによって、リスクを構造的に管理する行動に変わりました。
戦略的解決の結論
資金を「必要の資金」と「裁量の資金」に分け、それぞれのリスク許容度に応じて戦略を変える。そして、「買って宿題」を実践し、企業の成長性だけでなく、財務健全性も同時に分析する。
あなたが今日から取るべき行動
- 投資資金の分類と比率設定: 自分の資金を二つに分け、「裁量資金の〇〇%まで投機に回す」というルールを決め、必要資金などとの混同を防ぐ。
- 「負債の多さ」をチェックリストに加える: 企業の貸借対照表(バランスシート)を確認し、負債が過剰な会社は「防御力が低い」として候補から外す。
この防御を固めた上で、次回はいよいよ、「いつ株を買い、いつ株を手放すか」という、最も実践的で難しいタイミング戦略に焦点を当てていきます。
「賢いトレーダーは、市場のどのサインで売買を行うのか?」
次回も、ぜひお楽しみに。


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